top of page

IQの利用は第一次世界大戦時期のアメリカから始まり一気に研究が進み現在ではビジネスの現場で密かに使われている。

更新日:2023年3月13日

 IQと生産性、IQと学習能力の高さに関する研究はそもそもなぜ行われたのだろうか。IQによる将来性の予測をするということは、IQ格差の下位に位置する人たちにとっては都合の良い話ではないはずだ。実際、面接によるIQスクリーニングで効果の高さが明確になった事実を踏まえると、弾かれた人たちは自分が無能であるという烙印を押されるような格好となるため、決して気持ちの良いものではないだろう。


 そもそもIQテストは文化依存型であり欠陥の多い判断方法であるという批判もある。これは「IQテスト否定派」によるアメリカ左派の学者たちによく見られる意見であるが、右派の学者も負けじと左派の主張に対して2019年の論文で反論している。


 IQ肯定派による反論の内容としては次の通りにまとめられる。


IQ否定派の主張の大半はデータや統計ではなく政治思想や主観による根拠なき主張であり、「IQテストによる判断能力の予測妥当性は低い」という主張に関してIQ否定派は立証責任を一つとして果たせていない。

 まぁつまり、IQ否定派はデータによる反論や立証がなく、嘘や決めつけだけで適当なことを言うなとIQ学者たちは注意している訳だ。


 もちろん、IQだけが人の価値を決めるわけではないことは私も同意見である。ただ、資本主義の中で圧倒的な結果を出すことだけを目標とした場合、確かにIQによる判断はダントツの予測能力を誇るのは間違いない。


 ただ、IQと生産性の予測に関する歴史の起源を辿ると、実は第一次世界大戦にまで遡ることになる。


 戦争とは、自国の資本を限界ギリギリまで投入して他の国と争う訳なので負けるわけにはいかない。戦争に勝つということは、ただ性能の高い武器を作れば良いというわけでもない。性能の高い武器を効率よく最適に運用をするにも多くの人員が必要となる。より多く、より正確に、より素早く致命傷を与えた方が勝利となる以上、もし同じレベルの兵器をライバルが持っていた場合、最終的には運用効率の高さとスピードが決定打になってくるためだ。


 例えば大砲を一発打つにしても、装填する人、照準を定める人、発射する人、着弾を確認する人、標準のズレを修正して情報の伝達を担当する人、修理をする人、建設する人、設計する人、それらを一手に指揮する人と数多くの人員が必要となる。そのような背景もあることから、第一次世界大戦中にアメリカ軍は少しでも多くの人員を募集した。どんな人でも良いからとにかく集めたい訳だ。人種差別が残っている時代だからといって、黒人だからだめ、移民だからだめなどという贅沢は許されない。ありったけの資本と人員が必要であるため、例えメンタルや知能に多少の問題があるくらいでは入隊の拒絶はしない。それほど猫の手も借りたい状況である。


 また作業によっても要求される知的難易度に差はある。軍隊をまとめる士官、最先端の戦闘機を作る設計士など複雑な労働にはなるべくIQの高い人を任せ、単純な労働は高いIQの人材を無駄にしないためにも配置しないように工夫しなければならない。なぜなら、IQの高さは学習スピード、問題解決のスピード、熟練スピードが高く、コンピューターが未発達だった時代には高いIQの人材は非常に重要だった。


 アメリカ軍は入隊者全員にIQテストと身体テストを行なったため膨大な量のデータが集まった。その数は170万人分にも及ぶ。それらをもとに多くの試行錯誤を繰り返し、毎回新たなエビデンスの創出を試みた。初期の頃はIQとは無関係にとにかくいろんな役職に就かせたが、データが集まるごとにIQが高い人に複雑な労働を任せた方が問題が少ないことが浮き彫りになってくる。


 「戦争に勝つ」という人類史上これ以上にない焦りと目標設定によって駆動され、命懸けで科学的な検証を経て集められたデータの結晶がArmy Mental Testsだ。2008年からようやくオープンソースとしてインターネットでも閲覧できるようになったので、IQテストだけに限って内容を一部まとめた。次の通りだ。




 この表から何が見て取れるかというと、高いIQを持った人は高い位に辿り着くのが早いということだ。このような統計的なデータをもとに、あるIQによる予測に役立ててルールを設けたのである。ルールとしては次の通りだ。

  1. 将校の資質は主に「A」「B」グループに見出される。「C+」以下の者は、卓越した指導力と指揮能力を持っていない限り、将校訓練校の生徒として受け入れるべきではない。

  2. 精神的に劣る人 (C以下)を下士官として任命することは避けるのが望ましい。いくつかの慎重な研究により、「C-」や「D」の下士官や伍長は、不満足であると判断される可能性が極めて高いことが分かっている。少数の者が優秀であったとしても、その任命に伴うリスクを正当化することはできない。

  3. 「E」グループに判定された人は、直ちに除隊させるか入隊見送りにすること。精神年齢が7~8歳ほどで、どれだけ長期的に単純な作業を教えても学習できないため費用対効果の観点から受け入れることは避けた方が良い。

 IQによるフィルタリングはもともとは国家主導で行われた命懸けの作戦だったということを考えると、この知見がそのまま組織・産業心理学でも応用が効くのはなんら不思議ではない。根性論や政治思想だけでは科学に勝つのは難しいことがよく分かる。


 また、猫の手も借りたいほど慢性的な人材不足だったアメリカ軍も諦めるグループが存在することも非常に興味深い。「E」は統計的に見て10人に一人はいるので、この層に対してできる生産活動はないと国が認めたというのは恐ろしい事実でもある。



Q1 IQが重要なのは理解できたとして、それ以外にも重要だと考えられる資質、性格特性としてはどのようなものが挙げられるだろうか?二つ挙げよ。またその理由も述べよ。


Q2 資質と性格特性以外にも、重要と思えるスキルとしてはどのようなものが挙げられるだろうか?二つ挙げよ。またその理由も述べよ。


Q3 上記のスキルを伸ばすにはどのようなトレーニングが必要だろうか。意見を整えた上でディスカッションせよ。



タグ:

閲覧数:731回0件のコメント

Comments


bottom of page