少人数で起業したばかりの場合、とりあえず利益の分配を考えた上で行動するだろう。分配方法はさまざまだ。平等に分割する、成果を特に上げた人には多く支払う、公開前の株を一部譲るなどある。
今回は、チームによる利益の分配と歩合給の効果をまとめた。先に言っておけば、この歩合給の方がどうやら効果はあるようだ。頑張った人にはそれだけ多めに渡す。シンプルだ。ただ、シンプルであるがゆえそもそも効果があるのかどうかについて深く分析した研究をまとめたメタ分析はそれほど多くは無かった。
今回紹介するのは、チームでの利益分配がもたらす影響に関してのメタアナリシスだ。今回も興味深い発見が多かったのでぜひとも最後のクイズまで読み進めていただきたい。内容を一枚にまとめると次の通りだ。
上から解説しよう。
時短効率の良さ
目設定と達成の度合い
努力をする、エネルギーを注ぐ度合い
目的を達成する効果の高さ
情報の共有の頻度の多さ
各々がグループの活動に参加する意欲の度合い
仕事へのモチベーションの高さ
対話の多さ
生産性の向上度合い
その他にも細かい点はあったが省いた。全体を通して見ると、ポジティブな効果がよく目立つ。ただ、注意点も必要である。効果量の高さを赤く示している「目標設定と達成」に若干の問題があった。それも交えて解説を進める。
まず、主要な発見を伝えると以下の四つにまとめられる。
1
利益の分配は、チームに心理に良い影響をもたらすことが分かった。 (r = 0.34, k = 5, 95% CI [0.27, 0.41])
利益の分配や歩合給を採用したとしてもサボりが増える、足の引っ張り合いが増えるということはあまり心配しなくとも良い。しかし、これは有害社員を事前に予防できているという前提条件付きだ。有害社員がいた場合、足の引っ張り合いが頻発して結果としてチームの生産性が下がったことが確認された。有害社員の予防、早期発見、除外の徹底は必須である。
2
チームへの利益分配は、それぞれの行動にも良い影響をもたらすことが分かった。 (r = 0.32, k = 5, 95% CI [0.22, 0.42]
特に情報の共有という点で大きく向上した。 (r = 0.35, k = 3, 95% CI [0.25, 0.46])
ただ、時短効率は若干のばらつきが見られた。理由としては、モチベーションが高まりすぎたがゆえ高い目標に向けて行動するが、納期や締め切りに間に合わなくなることが増えることと、利益の分配や結果の分かち合いに時間をかけすぎてしまうことが原因であった。資本主義という枠組みで戦う場合、time is moneyという側面はどうしても強調されてしまう。品質の向上へのこだわりが強すぎる、または称え合う時間が長すぎて間に合わなくなるのは本末転倒といえよう。完成度の高さも重要だが、回転率の高さはそれ以上に重要だ。
3
チームへの利益分配は、ゴールの達成能力にも影響を与えた。
ただ、ここで懸念点として残るのが、そのばらつきの大きさであった。0から0.83という非常に幅広い信頼区間である。つまり、効果がゼロというデータも含んだ上での効果量であることを念頭においた方がよい。まぁ、マイナスになっていないだけよほどマシではあるが、過剰な期待は厳禁だ。(r = 0.42, k= 3, 95% CI [0, 0.83])
4
チームの利益分配は、結果を出すことにも良い影響をもたらした。 (r = 0.55, k = 3, 95% CI [0.18, 0.93])
企業が最も影響が高かった。 r = 0.54, k = 4, 95% CI [0.27, 0.82];
次いで学業が高かった。 r = 0.21, k = 4, 95% CI [0.10, 0.32]
スポーツへの影響は小さかった。 r = 0.03, k = 2, 95% CI [0.03, 0.03]
これはやはり業績を上げて収益を出すことを目的としている企業は、利益の分配と最も相性が良いのだろう。イメージ通りの結果である。
Q1 「利益の平等分割」と「利益の分割プラス歩合給」とではどちらが効果が高い?
Q2 利益の分配で最も効果が高かったのはどれか? 【 スポーツ 企業 学業 】
Q3 歩合給を採用した利益を分配を行った結果、ある企業では足の引っ張り合いが確認された。a) これにはどのように対処すべきか? b) 予防をするにはどうすればよいか? 意見を整えた上でディスカッションせよ
Q4 利益の分配により、チームのモチベーションが向上した。しかし、締め切りに間に合わない、納期に間に合わない従業員が現れた。決してサボっている訳ではないようだ。どのように対処すべきだろうか?意見を整えた上でディスカッションせよ。
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