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ダイバーシティを尊重?それとも実力主義?脳科学業績コンサルタントが解説!

更新日:2023年5月9日


まとめ


最近の企業研修の国際的なトレンドは多様性や平等性などのメッセージ性が強く、結果の平等や多様性を含みます。ですが実情は実力主義や行動で判断されることがほとんどです。


ダイバーシティ研修を受けたことをオープンにすることで、売り上げが上がることが明らかになっているため、大企業は研修を受けさせたことを公表する傾向にあります。


また、男女の平等が進んでいる国ほど、女性のメンタルヘルス不調が増加傾向にあることが分かっているためグローバルな企業が男女の格差の小さい国に対して多様性をアピールすることは理にかなっています。中小企業の場合、グローバルなトレンドに資本を使う余裕は無いのでリーダー研修などがおすすめとなります。


海外のトレンドと実情を一枚にまとめると



こちらのスライドは、海外のトレンドと実際を一枚に表した表になります。左側がトレンド、右側が実情です。


まず左から見ていきましょう。そこには

  • inclusion, equity, diversity

と書かれています。多様性や平等性などに関するメッセージ性が強い印象です。


一方で右側は

  • merit, equality, color blindness

と書かれています。成果主義、行動で判断、という内容でトレンドとは逆を行くような印象です。


それぞれどういう違いがあるのか詳しく見てみましょう。


海外のトレンドとは?



海外のトレンドからみてみましょう。


  • 割り当て:資質、能力や経歴にかかわらず特定の人を一定の割合で必ず受け入れること

  • 結果の平等:成果の多さとは無関係に全員に近い褒美や結果を与えること。

  • 多様性で判断:行動や能力ではなく、多様性と歴史的背景で相手を判断すること


共通点をみてみると、徹底した平等さを目指している印象が強いです。マイノリティや弱者にとってはとても救いとなる考え方なので、福祉が整っている国やマイノリティの割合が大きくなってきた国ほどこういったトレンドが伸びる傾向にあります。


多様性か能力主義か?


多様性とは、人々が持つさまざまな属性や特徴のことで、例えば、性別や年齢、人種や民族、宗教や文化などがあります。多様性は、組織においても重要なテーマとなっており、多様な人材を採用し、活用し、包摂することが組織のパフォーマンスやイノベーションに寄与すると考えられています。


能力主義とは、人々の能力や実績に基づいて評価し、報酬し、昇進させることで、組織の公平性や効率性を高めると考える価値観です。能力主義は、長年にわたって公共部門の人事管理の基本原則として採用されてきました。


しかし、多様性と能力主義は相容れない価値観であるという議論もあります。多様性を促進するためには、不利なグループに対して優遇措置を行う必要があるという主張がありますが、これは能力主義に反するという批判があります。また、能力主義を徹底するためには、有利なグループに対して競争を促す必要があるという主張がありますが、これは多様性に反するという批判があります。


では、多様性と能力主義は本当に相反する価値観なのでしょうか?それとも相補的な価値観なのでしょうか?この問いに答えるために、最近の研究を紹介します。


多様性トレーニングの背景と歴史


多様性トレーニングは、1960年代から1970年代にかけて、米国での公民権運動や女性解放運動などの社会的変化の影響を受けて始まりました。当時は、差別やハラスメントを防ぐために法的な義務として行われることが多く、感情的な成果(例えば、態度や満足度)に重点が置かれていました。


1980年代から1990年代にかけては、グローバル化や移民の増加などにより、職場の多様性が高まりました。この時期は、多様性をビジネス上の利点として捉える考え方が広まり、認知的な成果(例えば、知識や理解)や技能的な成果(例えば、コミュニケーションや協調)に重点が置かれるようになりました。


2000年代以降は、科学的な根拠に基づいた多様性トレーニングの設計や評価が進みました。この時期は、多様性トレーニングの効果を測定するためにメタ分析や実験的研究が行われるようになりました。


多様性トレーニングの効果


多様性トレーニングの効果については、さまざまな研究が行われていますが、その結果は一様ではありません。一般的に言えば、多様性トレーニングは感情的・認知的・技能的な成果に対して有意な効果を持つことが示されていますが、その効果量は小さく、研究間でばらつきがあります。


また、多様性トレーニングの効果は、トレーニングの内容や方法だけでなく、受講者の特徴や組織文化などの要因によっても異なることが分かっています。例えば、


  • トレーニングの内容では、バイアスやステレオタイプの心理的メカニズムを説明し、具体的な対策を提供することが効果的であることが示されています

  • トレーニングの方法では、オンラインよりも対面で行うことや、長期的に継続することが効果的であることが示されています。

  • 受講者の特徴では、女性や少数派グループの従業員は男性や多数派グループの従業員よりも多様性トレーニングに対して積極的であり、その効果も大きいことが示されています。

  • 組織文化では、多様性に対する組織の姿勢や方針が明確であることや、多様性トレーニングが他の人事施策と連携していることが効果的であることが示されています。


多様性トレーニングの課題と展望


多様性トレーニングは、職場での多様性と包摂を促進するために有用なツールであることは間違いありません。しかし、多様性トレーニングにはまだ解決すべき課題もあります。例えば、


  • 多様性トレーニングは、従業員の態度や知識を変えることはできても、実際の行動や結果を変えることは難しいことがあります。特に、多様性トレーニングが一度きりのものであったり、他の組織的な支援がなかったりする場合は、その効果は持続しない可能性が高いです。

  • 多様性トレーニングは、受講者に対して抵抗感や反発感を引き起こすことがあります。特に、多様性トレーニングが強制的であったり、罪悪感や恐怖感を煽ったりする場合は、受講者は自己防衛的な態度を取るかもしれません。

  • 多様性トレーニングは、多様性の定義や範囲について十分な議論を行わないことがあります。特に、多様性トレーニングが特定のグループ(例えば、性別や人種)に焦点を当てすぎる場合は、他のグループ(例えば、年齢や障害)を無視したり、グループ間の対立を助長したりする恐れがあります。


これらの課題を克服するためには、多様性トレーニングを単なる教育活動ではなく、組織全体の戦略的な取り組みとして捉える必要があります。具体的には、


  • 多様性トレーニングは、従業員のニーズや目標に応じてカスタマイズされた内容や方法で行うことが望ましいです。また、多様性トレーニングは定期的に実施し、その効果を測定し、改善することが重要です。

  • 多様性トレーニングは、従業員に対して説得的でなく、参加的であることが望ましいです。つまり、従業員に対して多様性の重要性や必要性を押し付けるのではなく、従業員に対して多様性の意味や価値を自ら発見させることが重要です。

  • 多様性トレーニングは、多様性の幅広い側面や次元について議論することが望ましいです。つまり、多様性トレーニングは特定のグループに焦点を当てるのではなく、多様なグループの相互理解や協力を促進することが重要です。


実力主義と多様性管理の相互作用


メリット原則と多様性管理は相反する価値観ではなく、相互に影響し合う価値観であるという研究もあります。最近のメタ分析では、メリット原則と多様性管理は感情的・認知的・技能的な成果に対して有意で中程度の効果を持つことが示されていますが、その効果は相互に影響し合っています。


すなわち、組織がより多様な人材を採用する場合や、より効果的な多様性管理を行う場合には、実力主義に基づく採用や評価がパフォーマンスに与える正の効果が強まることが示されています。


この研究は、実力主義と多様性管理を単なる教育活動ではなく、組織全体の戦略的な取り組みとして捉える必要があることを強調しています。メリット原則と多様性管理は相補的な価値観であり、バランスの取れた実践の組み合わせによって、組織のパフォーマンスやイノベーションを高めることができます。


現状はどうなっているか?



では実際の企業の実情をみてみましょう。


  • 実力主義:誰でも受け入れるのではなく、ある程度実力に見合った役割を負わせること

  • 機会の平等:ゴール地点の平等を保証するのではなく、スタート地点の平等を保証すること

  • 行動で判断:歴史的背景や人情ではなく、その人が有害な行動をとっていないか、生産的な行動をとっているかどうかで判断すること。


グローバル企業の中身はこういったプロセスで進んでいることがほとんどです。なぜ企業は、建前と本音が違うのでしょうか?これはカスタマーへのアピールが一番の目的であるとされています。


ハーバードビジネススクールの研究によると、保守的であると評価された企業は33%ほどリベラルから好感度が下がることが分かっており、どの大企業も積極的に多様性研修を受けさせたことを公表する傾向にあります。


さらに興味深いことに、男女の平等が進んでいる国ほど女性の神経質性は上がり、女性のメンタルヘルスの不調が増加傾向にあることも分かっています。



つまり、北欧の女性はメンタルの不安を感じやすい一方で、アフガニスタン、イラン、カタールなど男女の格差が激しい国ほど女性はメンタルがタフであるということです。


精神疾患やメンタルの弱さというのはマイノリティに分類されるため、ダイバーシティや弱者への理解を示すのは良いマーケティング戦略となります。


そうなると、男女の格差が小さい国に対して多様性をアピールすることは理にかなっていると言えます。一方で、保守的な国や女性がタフな地域に対しては多様性研修のアピールは効果が低いのかもしれません。


大企業はトレンドに資本を、中小企業は実情に資本を当てる傾向にある


グローバルな大企業は先進国へのマーケティングの一環としてダイバーシティ研修を受けることを公表する一方で、中小企業はそこまでの余力は残されていないためか実情に即した研修を受ける傾向にあります。


この分野は新しくできてきただけにまだまだデータの蓄積は必要ですが、中小企業は先に生産性の向上やリーダーシップに関する研修がおすすめなのは間違いありません。


結果の平等は可能なのか?




こちらのスライドは、AさんとBさんの能力やポテンシャルの違いを表した表です。組織で活躍する場合、同じ仕事、同じ作業内容、同じ時間を与えられても最終的には生産量に違いが生まれることがあります。


当然、環境を改善し、研修などによる能力開発をし、マニュアルを使った指導をしてもなお差が出ることはあります。スタート地点を公平に揃えることができたとしても、同じ時間内にゴールテープを切るのは現実問題として可能性が低いことはみなさん、感覚的には理解できるかと思います。


しかし、環境改善と能力開発を組み合わせることでどんな人も伸びることは間違いないので、費用対効果がプラスを上回るのであれば積極的に採用した方が良いことは確かです。


以上が、多様性と実力主義に関するブログの内容でした。


多様性は、職場での多様性と包摂を促進するために有用なツールであると同時に、その効果や課題についても常に考える必要があるものだと思います。皆さんも、自分の職場での多様性トレーニングについて、どう感じていますか?ぜひコメント欄で教えてください。それでは、また次回お会いしましょう。


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