一人一人面談しているのに従業員のモチベーションをあげられないでいる
給料を渡しているのに主体的に動いてくれない
ゴールを決めたのにチームワークが今ひとつでなかなか進まない
指示待ち人間ばかりでマイクロマネジメントをしないと何もできない
こういったことで悩むマネージャーはいます。
もしかしたら、モチベーションマネジメントに関する知識が十分ではないのかもしれません。そこで、そもそもどんな方法が研究されているのかを一通り理解し、エッセンスを抽出することで生産性が爆発的に上がる方法を学んでいただいて圧倒的な影響力を手にしていただきます。この記事を読み終えることには、ありとあらゆる人材をポテンシャルを最大限にまで引き出せる最強のマネージャになるのでそれを目指している人にはぴったりの記事となっています。
モチベーション管理の2大要素
数あるモチベーションマネジメント理論も、カテゴリーに分けると大きく2つに分類できます。
一つは「内面や人間関係」などによるものです。内面的なもので言えばマズローの5段階欲求などが有名です。人間関係であればメイヨーの研究も有名です。
もう一つのカテゴリーは「仕組みやゴール設定」などによるものです。仕組みであれば歩合制の導入や終身雇用制などが分かりやすく、ゴール設定であればOKR、KPIなどが有名です。それぞれの理論はスライドにまとめています。
内面によるモチベーションに分類できるのは次の通り。
Maslowの5段階欲求理論
Herzbergの2因子理論
McClellandの3(4)欲求理論
McGregorのXY理論
AlderferのERG理論
Mayoの士気理論
仕組みによるモチベーションに分類できるのは、次の通り。
Adamの公平理論
Vroomの期待理論
Taylorの士気理論
Banduraの自己効力感理論
Skinnerの強化理論
Lockeの目標設定理論
太字で表している文字は今回の記事で重要となる理論なので取り上げて解説します。
Herzbergの2因子理論
こちらの理論は人間のモチベーションをネガティブファクターとポジティブファクターに分けたところが画期的です。今まで一般的には「ストレスの原因となるネガティブなことを減らせば、自然とモチベーションと生産性は上がる」という前提を見事打ち崩したことがとりわけ印象的です。つまり、ストレスを減らすことと、モチベーションを高めることはそれぞれ全く別のことでありどちらも行う必要があるということを表しています。
どんなに給料がよくても、達成感やモチベーションが上がるようなキャリア形成などができなければ飽きが来てしまい幸福度は下がってしまいます。
反対に、どんなに達成感があっても、あまりに給料が少なければ結局やりがい搾取でモチベーションの維持は難しくなります。
ストレス原因を取り除くことと、達成感を提供することの二つを意識できているでしょうか?
McClellandの4欲求理論
こちらの理論は、マズローの理論をベースにそれぞれ対応するであろうモチベーションの源泉を3から4つにまとめた物です。
これを参考にすると、どのような報酬や環境を用意すれば従業員がパフォーマンスを発揮してくれるかのヒントが見えてきます。
例えば、
目標を達成したい⇨ゴール設定を支援する
影響力が欲しい⇨スキルアップやキャリアアップの機会を設ける
仲間が欲しい⇨チームで一つの目標の達成に向けて行動するようにサポートする
困難から逃げたい⇨チャレンジ精神を育むためにセルフエフィカシーを高める
など何らかの対策が見えてきます。
今、自分の職場に足りていない報酬はどれでしょうか?
Adamの公平理論
先ほどの二つの理論は内面に焦点を当てていたのですが、ここからは会社の構造や仕組みに組み込むことを前提にした理論が続きます。
Adamの理論はとても分かりやすいです。
公平に扱われていると従業員が感じることができれば、自然とモチベーションは高まるはずだと考えました。公平というのは、評価される時に使われる基準が客観的で可視化されている、評価者の好き嫌いで判断するのではなく説明責任を果たせるような評価を下す、などです。
ここでポイントとなるのは、納得を目指すのであって満足を目指すのではないという点です。どうしても能力格差がある以上、成果や実績に差が出るのは仕方がありません。また、似た成果を出したとしても基準に照らし合わせるとギリギリで等級審査に落ちることもあるかもしれません。
これにより、評価に差が出てしまうため当然ですが一部の従業員は不満を覚えます。少なくとも会社としては、理不尽な不満ではなく、納得のできる不満にもっていくことが重要となってきます。
納得のできる格差と、納得のできない格差の違いを従業員に説明できますか?
Banduraの自己効力感理論
続いての理論は、セルフエフィカシー(自己効力感)を仕組み化するという考えが特徴的です。
セルフエフィカシーとは、自分のゴール達成能力に関する自己評価のことです。
例えば
ゴール:3年後にクライアントの数が20名を超えていて年収が3000万を超えている
とゴールを設定した場合、そのゴールを達成できるぞ!と自分の将来性を信じ抜くことが続けていれば、それだけで無条件にセルフエフィカシーが高いということになります。
過信とよく似た概念ですが、過信とは現状の自分の能力を見誤ることをいいます。初めてのことでもできると思っていたことがもし失敗するとすぐにショックを受けて落ち込みます。しかしセルフエフィカシーの場合、今の自分の能力ではなく将来の自分の能力を高く見積もり、きっとできると信じることをいいます。失敗が続いても、成功するまで何度でも諦めないのでいずれは願った通りのスキルや能力を獲得します。
そのセルフエフィカシーを、仕組み化して自然と醸成できるようにしてしまえと考えたのがBanduraの画期的な点です。基本的には以下の行動のループになります。
成功体験を積ませる
周りが成功している姿を見せて刺激を与える
お互いに励ましあってsmall winを共有する
達成感とやる気がまた高まる
ということです。
従業員のセルフエフィカシーが高まるような仕組みを作ることができていますか?
Lockeの目標設定理論
5つ目の理論がこちらです。
Lockeの目標設定理論の特徴として言えるのは、目標そのものを具体性や困難度などミクロな視点で詳細に研究している点です。適切な目標設定さえできていれば、あとはフィードバックを定期的にすることで高いモチベーションを維持できるという点においてはBanduraの自己効力感理論に共通していると言えます。唯一の違いは、Banduraの自己効力感理論はチームやコミュニティを前提とした理論であるのに対して、lockeの場合は個人でも適応が可能であるという点です。どちらも特徴があり、組み合わせて使うことで相乗効果が得られるのでなるべく組み合わせましょう。
従業員に合った適切な目標設定の支援はできていますか?
Taylorの士気理論
いよいよ最後の理論となります。
Taylorは世界で初めて科学的な手法で生産性を高める研究を行ったとされる先駆者です。彼は労働者たちの体力と生産性がギリギリ釣り合う最も最適な条件を特定し、実際に利益率を大きく向上させた実績があります。彼がたどり着いた結論としては以下の通り
人はどうせ仕事にやる気を出せないから、やる気が無いことを前提に仕組みを構築すべき。
労働者たちは賃金を得るために働いている、したがって賃金が唯一のモチベーターとなる。ならば頑張った分だけ賃金を増やすシステムを導入してみよう。(世界初の歩合制)
効率よく即戦力に育てたい。マニュアルで再現性を高めてみよう。(世界初のマニュアル)
労働者と管理者とで分けた方が結果的には全体の生産性が高まるから分けよう。
今であれば、どれもあまりに当たり前なことですが当時は画期的な発見でした。
従業員を効率よく育てるためのマニュアルや研修は充実していますか?
まとめ「クリュスのモチベーションマネジメント理論」
上記すべての特徴と強みを組み合わせ、精緻化させた理論がこちらのスライドになります。
ここでしか見られないジャマール・クロスがまとめたモチベーションのまとめ表です。
赤い点線だけで囲ってあるエリアから解説します。
まず「目標と理念」が個人とチームとで共有された状態からのスタートとなります。当然、目標設定がバッチリであることが前提となります。そのあと、「努力の量」「努力の戦略」「チームの連携」「才能とスキル」「ストレス管理」が掛け算式に相乗効果を産み、「中間到達」となります。「中間到達」以外の全てがゼロだと、他をどれだけ掛け算しても結果はゼロになります。
中間到達の時点で、ある程度より大きなゴールを実際に辿り着けるかどうかを「達成確率」を予想します。この時に、達成確率が低すぎると感じた場合は無力感や無気力になるため、次がありません。その場合、目標を見直す必要が出てきます。逆に達成確率が高すぎると、目標のハードルが低すぎたため毎回余力を残していることになり、本来はさらに高みへと望めたはずだったことが分かります。
続いて青い点線を見てみましょう。
中間到達の次に待っているのが「外的報酬」と「内的報酬」です。外的報酬とは、「給料」「昇進」「ボーナス」などです。内的報酬とは「達成感」「研修とスキルアップ」「仲間との絆」などです。基本的に、外的な報酬が高すぎても低すぎてもいけません。高すぎる場合モチベーションを落とす可能性があり、低すぎる場合はやりがい搾取に頼っていることになるバーンアウトを起こす可能性はあります。
外的報酬を評価する際は、公平な基準に基づいた説明責任の果たせるものでなければなりません。納得のできる格差と納得のできない格差の違いをしっかりと伝えることで、評価者と従業員の納得感を高める必要があります。満足感ではなく、納得感というところが重要です。
最後は納得ができて、かつある程度の満足感も合った場合、従業員はその満足感を「報酬の魅力」として評価します。色々と頑張った割には、全体を通して外的報酬、内的報酬のどちらも魅力的ではなかったなと感じる場合は次に繋がりません。
会社で工夫を凝らしてこれらの壁を乗り越えられるような仕組み化ができていますか?
Comments