まとめ
ティーチングとコーチングはそれぞれ何が違うのか、データはあるのでしょうか。 実は脳科学的にも差があることが分かっています。難しいんじゃないか?大変で面倒くさいんじゃないか?そう思うのも不思議ではありませんが、実は簡単です。
違いはシンプルで「正しい知識を伝える」ことと「チャレンジ精神を高める」ことの違いしかありません。どちらも正しく使いこなすことで、従業員たちの生産性を高めることができるようになります。 ただし、この二つを使いこなせるだけの認知的な能力がなければリーダーとしての適性はないのでティーチャーという役割で妥協するか、適任者を探す必要がありますが、最も簡単なのは両方できる人に外注してしまうことです。
ティーチングとコーチングの生産性に関するデータ
ティーチングとは?
専門知識を教える、ノウハウを教える、コツを教える、解き方を教える、対処方法を教える、指導するなどです。コンサルやインストラクターがするようなことを全般的にティーチングとまとめることができます。
コーチングとは?
相手の悩みを特定する、現状を特定する、課題を特定する、理想を特定する、解決行動を特定する、展望を特定するなどです。専門的なアドバイスは最小限に止め、カウンセリング的な対話を通して言語化を手伝うことがメインとなります。
決定的な違いは?
ティーチングは答えを教えるのに対して、コーチングは答えを教えない
ティーチングは限定的な知識に特化しているに対して、コーチングは一般的な能力の底上げを目指す
ティーチングとコーチングどっちが効果が高い?
Gartnerのレポートによると、ティーチャー型(コンサル)は従業員に対して能力の成長を7%ほど向上させ、コーチング型(応援)は9%ほど向上させるようでした。
ただし、それぞれ、目的が違うため成長を数値化したところでその中身は違います。
ティーチャーは専門的な知識を身につけさせ、コーチングは土台となる自己効力感を高めるためどちらも重要です。臨機応変にどういう接し方が重要かを判断した上で使い分ける、役割分担することが大切です。
ティーチングが下手な「マイクロマネジメント上司」
先ほどGartnerのスライドで唯一マイナスになっていた関わり方である「付きっきり」はどうやら-8%の成長ということで、悪影響を与えていることがわかります。
付きっきりとは言い換えるとマイクロマネジメント上司であったり、完璧主義的で過干渉な上司のことをいいます。指示は具体的で細かいのですが、それが多すぎたり、中には「なんでそれもするの?本当に関係があるの?」と部下が疑問に思うまま渋々指示に従うこともあります。
問題としては、部下はトップの視点から見える目的と、そこから降りていくように段階を踏んで細かくなるタスクの繋がりが見えてこないことが原因にあります。全体の連携はどうなっているのか、自分の役割が全体にどんな影響を与えるのか、どのような作業工程があって今のタスクがあるのかが分からないと部下としてもピンとこないまま作業をするので、不満が溜まる一方です。
ティーチングが下手な「指示が曖昧な上司」
指示が曖昧な上司というのは、抽象的な指示が多かったり、部下がわかるように丁寧な指導と解説をしない人のことをいいます。
スライドのように、部下としては俯瞰的な指示だけを与えられても一番下の具体的な指示までの流れが分からず、万が一間違って解釈して良かれと思って行動した際の不安を払拭することができません。
せめて研修やマニュアルがあれば良いものの、そういったものがない状況で「主体的に動け」と言われても部下は混乱するだけです。またマイクロマネジメント上司と同様に部下は自分の役割の重要性や全体の流れが見えてこないので、やはり不満や不信感に繋がります。
ティーチング必須スキル「ピラミッド往復」
ティーチングには専門知識を伝えるという役割がある一方で、高い視点から低い視点まで満遍なくその流れを説明し、トップ、ミドル、ボトムまでわかるように伝えることが重要になります。
まさにピラミッドのような構造になっている全体の流れをビジョンとして共有しておくことで部下は自分の役割の重要性をよく理解し、責任感と充実感を覚えます。
これにより、組織や上司に対する不満と不信感は減り、やりがいと達成感の割合が増します。この作業のことを「ピラミッドストラクチャーの往復」と呼びます。
ただ、よくある間違いとしては
エッセンス、タスク、ポジション、ジョブの違いを理解せずに合わせて解説しようとする
取ってつけたように部下から意見を引き出そうとしているが結局発言権を支配している
集合的知性ではなく、個人のIQに頼ったミーティングをしている
これらはよく見かけますが、遅かれ早かれ「マイクロマネジメント上司」や「指示が曖昧な上司」に戻ることがほとんどです。
ピラミッドストラクチャーの往復
ピラミッドストラクチャーの往復は一度だけでは理解できません。
何度も行うことで少しずつ部下の理解度が高まり、モチベーションとストレスマネジメントがスムーズにできるようになります。ここで必要となるのが、上司による「我慢と教育」です。
もし上司が我慢できない人であれば、その上司はそこまでの人間なのでみんなのためだと割り切って異動させましょう。他に有能な人はいくらでもいるはずなので、その人を代わりにリーダーに任命してしまうことが結果としては組織の発展に大きく貢献します。
コーチングって胡散臭い?効果は?
コーチングに関しては数多くの研究がなされており、その効果の高さも数多く報告されています。
例えば、ビジネスコーチングで言えば生産性や目標達成が増加すること、また本人の幸福度や専門知識などが向上することも分かっています。
ビジネスコーチングってどんなことするの?
ビジネスコーチングは専門家がいるくらいなので、多少は経験と知識が必要になります。
元々は動機づけ面接やゲシュタルト療法などの様々な心理療法の技術をビジネスに応用したことから始まっているため、専門性は高まる傾向にあります。
代表的なのは、視点の時間軸を過去起点から、未来起点に切り替えるという手法です。これを行うことで現状の延長線上の解決策だけでなく、根本的な問題が見つけやすくなり画期的なアイデアを生み出しやすくなります。
未来起点に視点を移すには、ある程度現状から離れたところに目標を設定し、ビジネスと方向性を揃える必要がありますが、ここでよくある間違えとして挙げられるのが次の通りです。
とりあえず現状の外にゴールを設定したがピンとこない
現状の外だと思ったら実は現状の理想化だった
現状の外にはしたものの、ビジネスと方向性を揃えられずにいる
このあたりで失敗していることに気づかずにいると、3ヶ月ほど無駄にすることがありますので予防、早期発見、早期修正が重要となります。
自己効力感って何?怪しくない?
自己効力感というのは、自己評価に近い意味を持ちますが異なる点も多いです。
自己評価の場合、現状の自分に対する評価なので日々の生活を送っているだけで変化します。例えば、しっかりと準備していた資料とプレゼンが無事終わり好評だったりすると一時的に自己評価は上がります。
反対に、取引先で失敗をして惨めな思いをしているとその日の自己評価は下がります。このように、自己評価は環境の変化に連動する形「自信過剰〜自己嫌悪」の間を行ったり来たりします。
自己効力感の場合、未来から逆算する形で自分の将来性に対して自信を持つことで行動力と学習能力が高まります。日々の成功や失敗からの影響を受けにくいので割と安定しています。環境から左右されにくく、自分で自由に決めて良いというのが特徴です。
ただここでよくある間違いとしては、過信と自己効能感の違いを分からずにただ高めた結果、失敗に対する不安を高めてチャレンジ精神が下がってしまうことがあります。こうなると本末転倒なので、分からないで行うくらいなら地道にマニュアル通りに作業をしている方が実績が積み上がる分マシだと言えます。
病は気から
自己効力感は実際に学習効果を高めることが分かっています。
それこそシンプルな自己評価よりも効果が倍近いことが分かっています。セルフコンセプトとは、自分自身についてどのように理解しているかを表します。自分自身の実績、性格、人生、人間関係など今までのことの総合得点をどれほど性格に理解できているかで自分の学習能力は変化するということです。
最大で0.47の効果量なので、中程度の効果であると言えます。一方で、自己効力感は0.71の効果量なので中〜高程度であると言えます。予算の都合上どちらか一方しか選べない場合は、自己効力感から高めた方が得策だということです。
目標達成の脳科学とは
認知神経科学の分野で数多くの知見の蓄積により、コーチングの効果を説明できるようになってきました。基本的には以下の六つのステップであることが分かっています。
目標を設定し期待感を覚える(ドーパミンが線条体に送られる)
期待感が行動を生み出す
価値判断の優先順位ができるようになる(前頭前野で価値判断、優先順位を決める)
無関係な誘いにはNOと言い、関係のある行動だけに集中する
定期的にゴールに近づくことを実感することで達成感と快感を覚える(ドーパミンが中脳辺縁系に送られる)
新しく目標を更新し、次の期待感へと繋げる(ノルアドレナリンとドーパミンが共同する)
これらの工程を理解していると、どこでどのような作業をすれば適切にドーパミンを作り出せるのか、ノルアドレナリンを誘発できるのかが分かってきます。最もパフォーマンスが高い状態はこの二つのホルモンのベースラインが状態にある時だと分かっているので、1日の大半を脳内を再現することは重要となります。
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